機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第23話 戦火の陰

ランバ・ラルの名台詞をパクろうが,ユウナが漫画的なヘタレぶりを発揮しようがそんな事はどうでもいい。
安易に戦いが終わることも無いし,それ故に苦難の道程が待ちかまえていることは既定の事実だからである。違和感を覚えるのはそういうことでは無くてキャラクターの変質である。
キラ・ヤマト。SEEDの主役であり最強のコーディネーターである彼だけがこの世界を破滅から救うことの出来る存在である。
キラは自分自身が経験した悲しみをこれ以上広げたくないと願い孤独な戦いを続けてきた。それ故に独自の立場を貫き戦う者の全てが彼の敵となる状況となっている。
そんなキラがカガリ言ってはいけない言葉を発言してしまう。
アークエンジェルブリッジにてキラは,カガリに「こういう風になることを想像していなかったの?」と責める描写がある。その言葉がそれだ。
マリュー艦長が助け船を出しこの場を納めたが,この台詞はカガリを追いつめることに何故キラは気付かなかったのだろうか?
いや気付いて言ったのであればキラはかなり性格が悪くなっている。確かにカガリがオーブに留まっていてもオーブ軍の派兵を止めることは出来なかったと思われる。
だがどちらにせよあの一言を発言したためにカガリは誰の助けを借りずに自らオーブ軍に働きかけ止めるしか無い状況を生みだしてしまったのである。
更にオーブ軍とザフトの戦闘が始まった時点でキラはカガリに「出来るだけ何とかやってみせるから」という更なるトドメの言葉まで吐いている。
つまりキラは最初から両者の戦闘が収まるとは考えていなかった事を証明してしまっているのである。
前作終盤においてもキラやラクスの行動は遅かった。だがまだ何とかなると考え決して後ろ向きの発言は無かったし,それを口に出すのはタブーに近かった。
ジェネシスの発射を止めようとしたキラは最後まで決して諦めてはいなかった。だから最悪の未来を回避できたのでは無かったのか?
それを一番良く知っているキラが最初からカガリを責めるような台詞を言うこと自体がショックだった。
だから私には「こんなのはキラじゃない!」と思えたし,ブリッジにて偉そうに腕を組んでいるキラの絵自体にも違和感が生じている。
本来ならば以下のようにするのではないのか。

キラ 「僕たちはもう過ちを繰り返してはいけないんだ。だから一番いい方法を考えるべきだと思う」
カガリ「すまない。こんなことになってしまって。でもこんな状況でも私は戦いを回避させたいんだ。オーブはその理念に乗っ取っても今回の派遣は絶対におかしい。
その為にもキラ。いやマリュー艦長。みんなの力を貸して欲しいんだ」


こういう風にすればカガリを追いつめることなくアークエンジェルが一体となってオーブ軍とザフトとの仲介に乗り出せたのではないかと考える。
普通に考えれば戦闘開始前にカガリはオーブ艦隊と密かにに接触し収集に乗り出すのが妥当な選択だと思われるが・・・。
大野木氏の脚本は前作から傑出しているのだが今回のキラの定義付けは納得いかない。作画も美麗だがキラの冷たい視線と冷めた口調が強い印象を与えたのが私には衝撃だった。