機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第30話 刹那の夢

全ては予定通りであり決められている未来に向かって物語は突き進んでいく。
足掻くキャラクターの痛々しい心の叫びが本来のSEEDの演出であるならば、これもまた通過点の一つではないか。そう思えるくらい複雑な人間関係が描かれていく。
己の持つ力故にますます傲慢さを強めていくシン。ステラとの共感があろうともシンの個が変わることはない。ハイネの存在も残念ながらアスランとの距離を縮めることにはなっていない。
キラ・ヤマトアスラン・ザラ。そしてシン・アスカ。三人の立ち位置は全く違う方向へと向かっている。誰が正しくて、誰が誤っているのかが曖昧になっている世界を創り出している演出が見所だ。
おそらくそれはキラが言うように戦い続ける限り人類は再び終局へと向かっている事と無縁ではない。そう誰もが道を誤っているのだ。
だからキラが言うこと。アスランが言うこと。シンが言うことのどれもが正しい。要は一体誰が、何の目的で世界を動かそうとしているのかを示されないということにある。
前作が第28話から本論が始まったように本作も一気に物語が動き始めた。
デストロイや新主役機デスティニー。そしてストライクフリーダムの登場もあって作品自体も大きく変貌しそうである。
ところで高橋ナツコ氏の脚本は見事だった。派手なメカ戦も良いがキャラクター主体の物語の方が心に響く。複雑怪奇な物語なのでこういったライターが参加してくれる方がこの作品には合っている。