機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第31話 明けない夜

作り手が敢えて作り上げている閉塞感と刺々しい描写が強い印象を与える。ゼータにおいてカミーユ・ビダンがエキセントリックだったように本作におけるシン・アスカが正しくそれである。
当時、カミーユというキャラクターに関して抵抗感があったようにシンにもそれは強く感じられる。能力故にどのような罪も不問にされるという状況がそれを更に加速させているのだ。
議長特権という語は、ギルバート・デュランダルが望む世界の実現のために用意された便利な免罪符である。
ロード・ジブリールが用意していた殺戮兵器=デストロイ。このデータが予め議長の手に渡りながら表だった対抗策を講じられていないのは何故か?
そしてシン・アスカとステラの搭乗するデストロイとの全面対決が避けられないのも全ては予測されていたことなのか?
何故、ゼータと物語が此処まで酷似しているのか?そして、その結末が辛い展開になることさえも同じなのだろうか?それさえも特定の未来に到達するために意図的に用意されたシナリオの一部なのか。
色々と妄想は膨らむが今川泰宏監督版=鉄人28号を見ているような作為的作りが物語を更に辛い状況へと誘っていく。正直な話、知りつつも孤独な場所へと突き進んでいく展開に作り手の本気度を見た。
今まで描写されてこなかったマリュー艦長とキラ・ヤマトの会話内容にも納得。
神の位置に登り詰めたキラのやることは全て正しいというSEED肯定派の意見に嫌悪感を抱いていた筆者には今回のキラの悩みは納得できるものだった。
アスランだけが間違っていてキラだけが正しいということなど無い。現時点において二人に与えられている情報は一部にしか過ぎないのだから。
ついにというかやっと登場した巨大MA=デストロイの凄まじい破壊の描写に驚く。これはサイコガンダムの比では無い。ターンX化したビグ・ザムだ!
街を一撃で破壊する強烈な光学兵器。そして全方位に放出されるビームやミサイル。更にIフィールド(リフレクター)を装備した腕が分離し遠隔攻撃(ドラグーン)するという常軌を逸した能力。
正に凶悪。以降、地球軍が戦場に投入するMSが殺戮用にシフトすることからも、やはり終盤は前作同様、殲滅戦へと加速していくのだろうか?
(追記)そういえばOPではデスティニーとデストロイとの対決の構図になっていたが本編ではどういうわけかインパルスになってしまったのは、ちと残念・・・。