そして明日の世界より―― 御波ルート完了

キャラクターの独特の感覚に惹かれて御波ルートに挑戦。既読SKIPは標準。共通ルートにおける主人公の鬱な感情が限りなく消失したシナリオの奥には透明感溢れる至高の物語が存在していた。
美しきも儚い物語を支える御波というキャラクター。病弱で普通の人とは隔絶された世界で生きてきた彼女が見つけた一つの奇跡。それが主人公=葦野 昴との出会いだった。主人公と出会うことによって普通である事の意味を知った彼女が、やがて辿り着く喪失感の描写。そして普通であり続けた主人公が世界の最後を認識し、初めて御波と同じ場所に立つこととなる描写。最終的には前述した夕陽と同様の結論に達するのだがそのテイストは明らかに違う。
御波も葦野も自らの意志を重んじ生き方を決定しているキャラクターだ。人としての弱さを持ちつつそれを越えていく強さも兼ね備えているが故に二人の道が逸れていくことは無い。だから儚くも美しい物語が最後まで展開されていく事となる。
御波の立ち位置の巧みさ。練られたシナリオ。そして二人の世界と、外の世界との距離感が余すことなく描かれることとなった名シナリオであると断言できる。図書館で本を読む御波が他人と外の世界を認識するようになったのは主人公=葦野 昴の一言から始まったが、同ライターによる「遥かに仰ぎ、麗しの」の鷹月殿子も等しく描かれていたのを思い起させてくれた。

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