鶴田法男監督作品 映画=予言

優れた映画に仕上がっている。ホラー映画の名を借りて制作された家族の映画である。
原作は,つのだじろう氏の「恐怖新聞」。筆者には思い入れの深い作品であり映画化には一抹の不安もあったが見事にその不安をはね返してくれた一作となっている。
ポルターガイストや極度の残酷描写などは皆無であった。あるのは娘を失い彷徨い歩く元夫婦の男と女の物語である。
新聞は,それを予言したにしか過ぎないし,それによって登場人物が人生を棒に振ろうとも関係ないのである。
予言を変えることによって訪れる終わりの時間。回避する術を知らず,行うことは出来ない。ただ与えられているのは己の運命の最後を選択できる事だけだ。
映画の大半を娘を失った父親と母親の描写で費やされていることからも映画の方向性は明らかである。娘は家族の中心に存在して,それ故に家族が形成されている。三人は一人でありそれは無くてはならないのだ。
失ったことを後悔し,そして己を責めてまた苦しむ。悪霊と呼ぶべき存在は,敢えてその苦しみをループさせ主人公を逃がすことはない。地獄の輪廻が絶え間なく繰り返させるわけだ。
其の場所から見える一つの光景。それこそが本作品の辿り着く場所であり帰結である。「恐怖新聞」という作品を知っている者には実に巧みの思える部分のみをエッセンスとして映画化したなと感心してしまう。
「・・・間に合った」
これは主人公を演じる三上博史が最後に呟いた台詞であったが正に秀悦。そうこのために。この一瞬のために主人公=里見英樹は三年という時間を無駄にして彷徨い歩いていたのだ。
正に熱演としか言いようがない三上博史。そして妻を演じた酒井法子は圧巻であったと記しておこう。
単なるホラーではなくて,その生き様と結末に泣ける一作品に仕上がった。見終わった余韻は悪くない。
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