パルス Pulse

黒澤清監督の傑作映画『回路』のハリウッドリメイク版である。日本での劇場公開が終わってしまい見損ねていたがやっとレンタルに入ったので早速鑑賞した。
オリジナルの黒沢版はホラーというよりはSF映画に近い作りだったが、このリメイク版は娯楽性を全面に出したホラー映画の作りに仕上がっている。
難解だったオリジナルを巧みに一般向けに手直しており、黒沢作品を見ている者にしか理解不能だったラストシーンも差し替えられている。それでいながら独特の暗い映像や全編を覆う終末感はそのまま移植されているので成功の類に入るだろう。
勿論、あの赤いビニールテープも登場する。
オリジナル版の制作時期がインターネット黎明期なのでモデムでネットに接続していたのに対して、本作は無線LANや携帯電話を通じて奴らがやってくるので、よりスピーディーな展開となっていたのが印象的だ。
ただ日本と西洋との間に存在する霊に対する意識の違い故か明らかに齟齬が見られたのは仕方のないことなのだろうか?
この映画に登場するのは幽霊では無くてゴーストである。だがリメイク版では、それさえも明快に語られていない。オリジナル版で描かれていた向こう側の住人の孤独感と苦しさといった場面は皆無でありモンスター化したゴーストといった描写のみに終始している。
そのため生者と死者の立場が入れ替わるといった怖さが全くといっていいほど描かれていない。それが作品の印象を平凡なものにしている。だがこれはキリスト教圏の思想に係わる問題を内包してそうなので触れないのは仕方の無いことかもしれない。


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