細田守監督作品=サマーウォーズ(ネタバレ注意)

試写会に行ってきました。場所は新宿の厚生年金会館。非常に女性が多くて若い世代の客層だったのが特徴でした。メジャー劇場用映画としては「時をかける少女」に続く作品がこのサマーウォーズです。監督としての力量を問われるのは往々にして第二作目だと考えていますのでその辺りを見に来ました。
肝心の作品の出来は・・・微妙でした。冒頭で日テレのクレジットが大きく表示された時に嫌な予感がしたのでしたがそれが結果的には当たってしまったという所です。
作品に注ぎ込まれた緻密さ。作画や美術の非常に高いクォリティ。CGを駆使した仮想世界OZの表現手段など見るべき点は多いです。更には魅力的なキャラクターが数多く用意されていてドラマとして必要不可欠な要素は網羅されています。
それでいながら何故?というのが正直な感想です。一言で言うならば商業ベースに乗ったために誰もがハッピーエンドに思えるエンディングを作り上げた点にあります。これが実に嘘っぽさを強めているんです。
家族の話でありながら用意されたのはそこに接点すら存在しない主人公=小磯健二。仮想世界OZのメンテを担当する理科系男子という設定。
細田監督が以前作り上げた映画「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」をベースに物語が構築されています。しかし114分という上映時間を消化するために仮想世界の物語に留まらずリアルな世界も描いています。しかしリアル世界における家族の物語があまりに良く出来すぎているために見ているうちにOZ世界で繰り広げられているバトルを中心としたアクション描写が同じ世界に存在しているように思えなくなりました。特に主人公の存在意義がラスト十分しか用意されていない上に陣内侘助という端役のキャラ立ちが巧みで全てこのキャラに喰われてしまっているのも致命的に思えました。誰が主人公なのかと問われれば家族全員としか言いようが無いのもちょっと・・・。
ヒロインの篠原夏希は魅力的なキャラですが主人公の健二には全く興味無い上に叔父の詫助を幼年期から憧れを抱いていたという超設定が劇中で明らかになります。それでいながらラストで周囲に後押しされるにせよいきなり相思相愛でカップル成立というのは如何なる理由によるものなのか?それも含めて終わりよければ全て良しという何とも強引な手法に思わず驚いた次第です。ラストカットの陣内栄の笑顔もやり過ぎに思えました。
直接作品とは関係ないのですが上映時間になっても開始されない不手際。そして客席数2000を越えるにも関わらず立ち見や通路に座り込む状態が発生するというのは・・・。試写会の参加証というのは来ない人のことも考えて割り増し分があるのだろうか?数多くの試写会に参加しているがこのような出来事は初めてでした。